作業が止まった日
止まったのは会話ではなく、毎日つけていたブログの収益記録でした。PC側のブラウザが使えなくなり、記録が1日分、未記録のまま残りました。別のAIに続きを頼もうにも、「どこまで記録済みか」が止まった側の中にしかなく、外から確かめられなかったのです。きっかけは使用量の枠を使い切ったことではなく、ブラウザの停止でした。
この経験で、使用量を把握することとは別に、止まった作業を引き継ぐ準備も必要だと分かりました。止まる原因は様々ですが、困るのは共通して、「いまの状態」と「どこまで終わったか」が外から見えないことです。
対策として始めたのが、複数AIの使用量を1枚の表にまとめて管理することです。表の作り方の基本は入門編に書きました。この実践編では一歩進めて、表を「台帳と履歴」に育て、AIが止まっても別のAIへ引き継げる形にする運用を書きます。複数のAIを仕事で使い分けている人向けの内容です。表の基本から知りたい人は、まず入門編からどうぞ。
なお、使用量の上限や仕組みは変わることがあります。この記事は2026年11月時点の運用メモで、最新の仕様は各サービスの公式情報でも確認してください。
私のAIの使い方(前提)
役割分担は、ざっくりこうなっています。
- ChatGPT: 全体の進め方の相談、計画づくり、原稿化。実行系の作業には Codex(ChatGPTの実行作業用の仕組み)も使う
- Claude: 改善案を考えたり、別の視点で見直したりするレビュー役
- Muse(Meta のAIアシスタント): 定期的な確認作業や記録を担う役。ほかのAIが止まったときの「引き継ぎ役」でもある
- Gemini: API(アプリや仕組みからAIを呼び出す窓口)の前払い利用など、用途を決めて使う
1つのAIだけなら、使用量はそのサービスの画面を見れば済みます。複数に分けると、困りごとが出てきました。
複数AIで起きた困りごと
1. 枠の単位とリセットがバラバラで、止まるまで気づけない
AIサービスにはそれぞれ「使える量」の枠がありますが、単位もリセットのタイミングも揃っていません。短い時間単位のもの、週単位のもの、前払い残高で管理するもの。公式ヘルプは自社サービスの確認方法しか書いていないので、横並びで見る場所は自分で作るしかありませんでした。
実際に、ChatGPT・Codex の週枠(1週間で使える量の上限)は、知らないうちに逼迫していたことがあります。困ったのは利用枠だけではありません。使用量を確認する作業そのものも、よく止まりました。止まってから気づく、では配分の直しようがありません。
2. 1つのAIが止まると、その中にある情報ごと止まる
導入で書いた収益記録の話がこれです。一般化すると、「どこまで終わっていて、次はどこからか」が止まったAIの中にしかないと、別のAIは続きを引き受けられません。引き継ぎに必要なのは、最後にできたところ(再開地点)と、まだできていない部分が、外から見える形で残っていることです。
3. 「いまの正しい数字」がどこにも残らない
各サービスの画面に出るのは、見た瞬間の値だけです。昨日の値は上書きされて、後からは参照できない場合があります。しかも表示は丸められていて、リセット日時が変わることもありました。「このペースなら週末までもつ」という単純な予測が外れたこともあり、予測より「確認した値と日時」を残すほうが確実だ、というのが実感です。
対処:情報を「置き場所」で分ける
そこで、情報の置き場所を役割で分けました。ポイントは、自分と、閲覧できる環境を揃えたAIとで、同じ情報を見られるようにすることです。
Notion の台帳 = 「最新値」を置く場所
Notion に「AI・API使用量台帳」という台帳を作り、AI・APIごとに最新確認値を1行ずつ置いています。
Notion を使う理由は、自分も、各AIも、同じページを見られるからです。AIに作業を頼むときも「台帳のこの行が最新の数字」と言えば、前提を共有できます。ここは「いまどうなっているか」を見る場所です。
Google Drive の履歴 = 「経過」を残す場所
台帳は最新値に更新していくので、変化の流れは別に残します。Google Drive に、日時つきの履歴ファイルを置いています。
ファイルにしておく理由は、AI同士でそのまま受け渡せるからです。引き継ぐ側のAIは、履歴ファイルを読めば「いつ、どの値だったか」の経過をたどれます。

引き継ぎ = 台帳と履歴で、再開地点を判断できる
この2つがあると、あるAIが止まっても、別のAIが「台帳で現在値を確認し、履歴で経過を見て、再開地点を判断する」ことができます。収益記録も、この形で Muse に引き継ぎました。なお、引き継ぎには再開地点の情報だけでなく、ログインや承認が必要になる場合もあります。情報が揃えば自動で進む、という話ではありません。
Drive の履歴は、たとえばこんな行の積み重ねです(ChatGPT・Codex の週枠の例)。
- 2026-11-02 09:34 週の残量 52% リセット 2026-11-04 16:02
- 2026-11-02 15:28 週の残量 51% リセット 2026-11-04 16:02
引き継ぎのときは、台帳と履歴に加えて、こんなメモが残っていると続きから入れます。収益記録を引き継いだときの実例です。
- 対象:ブログ収益の日次記録
- 最後に記録できた日:2026-10-29
- まだ終わっていない分:2026-10-30 以降
- 止まった理由:PC側のブラウザが使えなくなった
- 再開の条件:台帳と履歴で、未記録の日を確認してから始める
台帳に書いている項目
台帳(Notion)に残すのは、サービスごとに次の項目です。
- 残量または使用量(単位と集計期間つき)
- リセット日時・期限
- クレジットやクーポンの残り
- 自動チャージ(オートチャージ。残高が減ると自動で買い足す設定)の有無
- 確認した日時と、根拠(どの画面・履歴で見たか)
2026-11-02 時点の実例
確認値の例です。値はいずれも表示値で、サービス側の丸めを含みます(長いので、まず ChatGPT と Claude の2つだけ見れば書き方が分かります)。
- ChatGPT・Codex(2026-11-02 15:28 の観測): 週枠の残量 51%。リセットは 2026-11-04 16:02。完全リセット券(枠を回復させるための券)2枚(期限は 12/1 05:24 と 12/2 07:52)。追加クレジット 0、自動チャージ オフ
- Claude(2026-11-02 朝の確認): セッション枠(短い時間単位の上限)の使用 2%、週枠の使用 7%。週枠のリセットは 2026-11-08 06:00。プロモーションクレジット残り $7.70(期限 2027-08-18)。月間の上限 $10 に対して今月 $0、自動チャージ オフ
- Gemini API(2026-11-02 朝の確認): 前払い残高 ¥95。オートチャージ オフ
- Gemini 定額枠(2026-11-02 朝の確認): 短期枠の使用 3%、週間枠の使用 1%
- Muse(2026-11-02 朝の確認): 無料プラン。週間枠の使用 19%
- Grok(2026-11-02 朝の確認): 当時はサインインできず、値は未取得でした(0 ではありません)。その後の確認状況は後述します
台帳のルール3つ
運用してみて、先に決めてよかったルールです。確認した日を書く、取れなかった値は「未確認」と書く、という基本は入門編でも紹介しました。ここでは理由を含めてまとめます。「困りごと3」で書いた予測外れの経験が、このルールの根拠になっています。
- 取れなかった値は 0 にしない。「未取得」と書く。0 と書くと「使い切った」と「まだ見ていない」が区別できなくなります
- 確認日時を必ずセットで書く。使用量は動くので、日時なしの数字はあとで使えません
- 使用済み%は算出値だと分かるようにする。画面に出るのは残量のことが多く、「100 − 残量」で出した使用済みは、表示値そのものとは分けて扱います
残量を見て、仕事の配分を考える
台帳が効いてくるのは、配分を考えるときです。
2026-11-01 に全体を眺めた時点では、逼迫していたのは ChatGPT・Codex の週枠だけで、消費の中心は通常の会話ではなくエージェント(人の代わりに手順を進めるAIの働き)の実行でした。一方で Claude の週枠には余裕がありました。
そこで「どの仕事をどのAIに寄せるか」は、モデルの賢さだけでなく「枠がどれだけ残っているか」でも決める、という整理をしています。たとえば、定期的に回す確認作業は枠に余裕のある側へ寄せる、ChatGPT 側の負荷が高い作業は思考の量やモデルの段階を落とせないか先に点検する、といった具合です。
これは検討と運用の話で、「これで何時間短縮できた」という効果を測った話ではありません。配分の見直し自体は、これから回しながら確かめていきます。
確認の仕組み
台帳と履歴の更新は、引き継ぎ役の Muse が定期的に行っています。目視で毎日追うのは手間だからです。
- ChatGPT・Codex の週枠は 6時間ごとに履歴を確認し、通常は何も言わない。知らせるのは、監視が止まった疑いがあるとき、残量が 30% 以下になったとき、大きく減ったときなどに限る
- 全体(Claude、Gemini、Muse、Grok)は毎朝まとめて確認し、台帳と履歴を更新する
正直に書くと、この確認の仕組み自体も、止まることがあります。新しいサインインやパスワード入力が必要になった時点で確認は止まります。その場合は推測で数字を埋めず、「ログイン待ち」として記録し、確認できた分だけを台帳に反映するのが今の対処です。止まった経験から生まれたルールでもあります。
まだできていないこと
Grok は、2026-11-05 14時の確認ではサインイン済みで、新規の調査を1回送信し、回答を受け取れました。一方、確認した無料版の画面には、利用率・残量・上限・リセット日時の表示がありませんでした。利用できることは確認できましたが、使用量の数値やリセット日時は未取得のままです。表示がない項目は推測で埋めず、未確認として扱います。
まとめ
- 複数AIの使用量は、私が確認した範囲ではサービスを横断して見る公式の場所がなかったので、自分で台帳を作る
- 置き場所を分ける:Notion の台帳に「最新値」、Google Drive の履歴に「経過」。自分とAIが同じ情報を見られる形にする
- 台帳には残量・リセット・クレジット・自動チャージの有無・確認日時をセットで書く
- 取れなかった値は 0 にせず「未取得」と書く。うまくいっていない部分も、そう書いて残しておけば、後から見直せる
- 配分は「賢さ」だけでなく「止まらないか・枠が残っているか」でも決める
苦労の末に「止まらなくなった」わけではありません。止まった場所と、再開に必要な情報を残す運用に変えた、というのがこの記事の結論です。

コメント